はじめに
ふとした瞬間に、
定年後のことを考えることがある。
たとえば、会社の帰り道。
駅のホームで電車を待ちながら、
「あと何年、この生活を
続けるんだろう」と頭をよぎる。
別に深刻に悩んでいるわけじゃない。
でも、なんとなく気になる。
年金のこと、仕事のこと、
毎日をどう過ごすかということ。
聞きたいけれど、
誰に聞いていいかもわからない。
そういう、
ぼんやりした不安みたいなもの。
きっと同じ世代の人なら、
少なからず覚えがあるんじゃないかと思う。

この本との出会い
そんなことを
ぼんやり考えることが多くなった頃、
目にとまった本があった。
大杉潤さんの
『定年ひとり起業』という一冊。
「起業」と聞くと
ちょっと構えてしまうけれど、
表紙に書かれていた言葉が
どこか穏やかで、
思わず手に取った。
読んでみて感じたこと
読み終えて残ったのは、
意外なほどの「軽さ」だった。
いくつか、
自分のなかに残ったことを
書いてみる。
まず、
「雇われない働き方」
という考え方に、
すっと共感できたこと。
会社に属さないで働くというと、
どうしても大げさに聞こえる。
でもこの本では、
何も大きな投資をしたり、
人を雇ったりする話ではなかった。
自分の経験や得意なことを使って、
小さく始めるという話だった。
それなら自分にも
関係があるかもしれない、
と素直に思えた。
それから、
「好きなことを仕事にする」
と書かれている部分。
よくある自己啓発っぽい響きに
最初はちょっと身構えた。
でも読み進めると、
「好きなことが
なかなか見つからない人」のことも
丁寧に書いてあって、
そこに誠実さを感じた。
自分が当たり前だと思っていた経験が、
別の世界では価値になるかもしれない
という視点は、新鮮だった。
そして何より、
いちばん背中を押されたのは、
「定年ひとり起業は、
思っているほどハードルが高くない」
という言葉だった。
起業というと、
どうしてもリスクが大きくて
自分には縁がない、と思い込んでいた。
でも年金という土台があるうえで、
月に数万円を目指す規模なら、
確かに話は違ってくる。
なるほど、こういう選択肢もあるのか、
と視野が少し広がった気がした。
こんな方に届くといいな
もし、
定年のことが
なんとなく気になり始めている方がいたら、
この本は静かに
寄り添ってくれると思う。
「まだ先の話だから」と思いつつも、
ときどき不安がよぎる。
再雇用か、それとも別の道があるのか。
考えたいけど、
何から考えればいいかわからない。
そんなふうに感じている方に、
ちょうどいい温度感の一冊だと思う。
起業の本というよりも、
「これからの暮らし方を
考えるための本」
という印象が近い。
読んだあと、
少しだけ肩の力が抜けるような、
そんな読後感だった。
書籍情報
| タイトル | 定年ひとり起業 |
| 著者 | 大杉 潤 |
| 出版社 | 自由国民社 |
| 発売日 | 2021年3月25日 |
| 価格 | 1,540円(税込) |
「そのさきBOOKS」は、
定年前後の暮らしのなかで出会った本を
静かに紹介するシリーズです。
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